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  • いちご栽培を始めるまで
当園では、「いちご農家応援プロジェクト」という、いちご農家として新規就農したいという人を
積極的にサポートをさせて頂く事業を行っています。

そのためか、これからいちご農家として新規就農したいという気持ちを持っている人とお話させて頂くことが多々あります。

そこでこの投稿では、私がどういったいきさつで現在に至ったのか、を書かせて頂こうと思いました。

まずはじめに、私がいちご農家になろうと思い立ったのが20歳のころでした。

先祖代々、農家として梨を栽培しており、私も農家を継ぐとなった場合、梨だけに頼った経営は
危険だと考えました(梨は収穫の時期が夏に限定されてしまい、台風など自然災害による影響を強く受けるため)。

梨以外にも、何か経営の柱になる農作物はないだろうか。
そう考えていました。

ちなみに、昔から梨の販売方法は全て直売で販売していました。

当園のある京都府八幡市は昔から梨の産地として知られていました。

沢山の梨農家の方々が八幡市で梨農園を営み、地元の方々は、夏は梨を食べる。
八幡市ではそういった文化が根付いていました。

それもあってか、ちゃんと美味しい梨を作ることができれば、一度食べていただいたお客様がリピーターとなり、
それが十数年続いていたので、私が実家の農園に関わり始めた頃には、
毎年決まったお客様が決まった量の梨を買ってくれる。

そのような形がすでに成り立っていました。

当園の梨を食べてくれたお客様が、

「甘くて瑞々しくて美味しかった」
「ここの梨を食べたら、他の梨は食べれない」

など言ってくれて、

「自分も美味しい梨を作ってお客様の期待に応えよう」

という想いを原動力に、毎年梨を栽培していました。

今になって思うと、この時の経験・考えが私にとって原点であり、
栽培する作物が梨からいちごに変わっても、

「お客様に喜んで」という気持ちは変わらずに、一番大事にしていることです。

農業において市場出荷(JA出荷)型の経営の場合は、作った農作物を市場に出荷して、
そこで市況などに見合った価格が決められ、仲卸業者に売られています。

しかしその仕組みですと、農家は自分の作った農作物がどこに流通していて、
どこで販売されているのか、お客様からはどんな評価を頂けているのか、

といった事にあまり関心を持つ機会がなく、売上に繋がる【量】を
重要視した栽培に偏りがちです。

こういった場合において、お客様は最後に自分の農作物を手に取ってくれる
消費者ではなく、市場(JA出荷)の担当者になります。

その為その担当者たちを満足させることが目的になるのですが、
その担当者たちが実際に自分の作った農作物を食べる事は滅多にしないと思われるので、
農作物の見た目(規格)や量に着目してしまうのは当然のことかも知れません。

しかし当園の場合、前述したとおり梨は直売で販売しており、消費者であるお客様が
購入してくれるので、一番の関心は【味】でした。

梨においても、形が変形していたり、熟しすぎていたりするものは
市場では規格外になってしまい出荷ができないですが、直売の場合は
味は変わらず美味しいということをお客様がわかっているので、定価より安く
販売することができていました。

実際にお客様も、通常より安く買えるので、そういった梨を目当てに
買いに来られる方もいらっしゃいました。

このように、販売する相手(個人か法人か)によって、
求められる農作物の状態などが違ってきます。

農家は当然そういったニーズに合わせて農作物を栽培していかなければいけません。

話を戻しますが、梨以外に栽培する農作物を探していた私は、

「市場出荷型ではなく、これまで先祖代々実践していた直接販売型の農業がしたい」
「お客様に喜んでいただきやすいのは、野菜よりも果物ではないか」
「梨の収穫時期が夏だから、収穫時期が被らない冬から春にできる果物」

といういくつかの条件から、【いちご】に辿り着きました。

よく、色んな人からなぜいちご栽培をはじめたのですか、と聞かれるのですが、
それは、代々都市近郊で梨を直接販売してきたDNAが私にもしっかりとつたわり、
導かれたものだと思っています。

そんなこんなでいちご栽培を始めることを決意しました。

しかし決意したのはいいものの、当時(2005年頃)京都府では勿論の事、
関西圏ではいちご栽培を行っているところは少なく、いちご農家も数少ないものでした。

それに、私がしたいと考えていた高設栽培での栽培を行っているいちご農家は
数える程度で、勉強をしたくても教えてくれるような所がありませんでした。

しかし、全国を見渡せばいちご栽培が盛んな地域があり、各地のいちご農家さんに
連絡をしてアポイントを取り、視察をさせていただきました。

それから岡山県で観光農園を経営されていた会社に就職し、その後、
約2年間の研修期間を経て、23歳の時に、実家の稼業を継ぐ形で
新規就農することになりました。

さて、ここからは、いよいよいちご農家として新規就農するために、
一つずつ階段を上っていくことになります。

新規就農するためにやるべきことはざっと以下の通りです。

1 農地決め(探す)
2 資金集め(補助金を活用する)
3 栽培ハウス建設
4 いちご栽培の開始

まず、一番最初にしないといけないことはハウスを建設するための農地を探し、
決めることです。
これは、特に非農家の方は苦労されるかもしれません。

農地探しの条件は、
・ある程度まとまった農地(できれば、20a〜30aの農地)
・周りに太陽の光を遮るような障害物(山や建物)がない
・インフラ(水や電気)が整っている、もしくは整えることが可能
上記の点が挙げられます。

また、ハウスの中の日当たりを均等にするために、南北方向に長い農地であったり、
観光農園を検討している場合は、交通の便が良い主要道路に面しているなど、
好条件は挙げだすと、枚挙にいとまがありません。

実際に農地を探しだすと、良い条件の整った農地を探すのに大変苦労すると
思われるので、どこかで折り合いをつけることも大切です。

まずはいちご栽培をはじめる。ということが大切なのです。

農地探しについては、各地域の農業委員会や農地中間管理機構(農地バンク)に
問い合わせる方法などがあります。

ちなみに、私自身は元々実家が農家だったため、農地がすでにありました。
今になって思うと、本当に物凄く恵まれた環境でしたし、ご先祖様には感謝しかありません。

さて農地が決まれば、次は資金集めです。
ストレートに言うと、いちご栽培を始めるための初期投資費用は膨大な金額です。
そのため、新規就農を志している方の多くは補助金や農業融資などを上手く活用して、
ハウスを建てることが多くなると思います。

そのため、これらの申請に必要な書類作成や関係機関との調整などで6か月〜1年は最低でもかかるのではないかと思います。

特に、まだ栽培実績などない新規就農者の場合は、実現可能性の高い現実性ある事業計画
を作成し、ご協力いただく方々に信用してもらわなければいけません。

たくさんある補助金や融資についての詳細情報は各地域に新規就農支援窓口が
ありますので、そちらに相談されるのがおすすめです。

しかし闇雲に質問・相談するのではなく、農林水産省や各都道府県のホームページを
見て、自分のケースに合わせて活用できそうな補助金を前もってに調べましょう。

そして実際にやるとなった場合には、移住するということも考えられると思うので、
そうなった場合はどうするのかなど、下調べをしっかりとした上で、
ある程度、自分の計画を具体的に伝えられるようにしておいた方がいいと思います。

ちなみに私の場合、この計画作りの部分でとても苦労をしました。

その当時は京都府下で高設栽培のいちご農家が非常に少なく、前例がほとんどない
ということもあり、実現可能性が低いと判断されてしまい、私自身もその意見に対して
反論できるだけの根拠(説得力のある栽培技術、販路の確保など)を持てていなかった
こともあり、途中で私のいちご栽培計画は頓挫してしまいました。

まだ20代半ばそこそこの若造が、どんな夢見事を言っているんだ、
と思われていたのかもしれません。

しかしそこから紆余曲折あり、何とか関係各位の皆様にご協力をいただけることとなり、
新規就農に向けて議論を再開することができ、最終的に青年等就農資金
(当時は新規就農支援資金)を活用し、いちごハウスの建設ができることとなりました。

ここまで話した農地探しと資金集めですが、窓口が同じということが多いので、
これから新規就農しようと考えている人は、同時並行で進めても良いのでは
ないかと思います。

また、農地が決めればその土地で腰を据えて、継続していちご栽培をやっていくことに
なるので、長期的な視点で時間をかけてじっくり考えながら進めていかれればと思います。

そしてこの2点が決まれば、次はいよいよハウス建設です。

ハウス建設の前段階として、限られた予算の中で最高の設備を作れるよう、
何度も見積もり合わせをしていくことになります。

美味しいいちごをたくさん作る為には、土台となるビニールハウスや栽培システムは
勿論のこと、様々な設備・機器を導入し、いちご栽培に最適な環境を
整えなければいけません。

それらを予算内に抑えるためには、各設備・機器の費用対効果をしっかり検証し、
取捨選択をしていかなければなりません。(もしも潤沢な資金があれば話は別ですが…)

※農業用のビニールハウスやいちご高設栽培のシステムなどについては、追々の投稿で詳しく書かせていただきます。

いちご栽培にとって最適な環境作りの為、ハウス業者に視察をお願いし、
設備の勉強会への出席やビニールハウスやいちご栽培システム見学等に参加し、
自分自身の考えのもと、ベストないちごハウスの建設を目指しましょう。

私の場合は、まずは行動ということで、とにかく沢山の視察に行きました。

資材メーカー等にご紹介頂いたいちご農家の方を訪問させていただき、
ハウスのことや栽培システムの事、いちごの事を、聞いて聞いて聞きまくりました。

当時の私は運が良かったのか、訪問先の農家の方は皆様、本当にとても親切に
対応してくれました。

この経験から、もし将来自分が同じような立場になったら、
今自分がしてもらっているように丁寧に対応しなければいけないな、
と視察をしながら思っていました。

さて、最後はいよいよいちご栽培についてです。

いちご栽培については、研修先の農家や先輩農家、地域の普及センターや、
栽培システムメーカー担当者など、いちごに詳しい人達に直接質問して情報を集めたり、
実地研修をすると良いと思います。

いちごの栽培は1年を通じて行いますので、研修をする場合は、農地探しや
資金集めと並行して行うべきだと思います。

私の場合、当時は梨栽培も並行して行っておりましたので、研修は一切せずに、
いちごに詳しい人に直接聞いたり、いちご関連の書籍や資料を読んだりしました。

そして、あとは実践あるのみ。

知識よりも体得を重視。
たとえ知識をたくさん得ても、実践そて得た経験に勝るものはない、と考えています。

十数年のいちご栽培を続けてきましたが、病害虫が大量に発生したり、
台風でビニールハウスが飛ばされたり、最も大切な苗づくりに大失敗したりと、
沢山の失敗や苦労を重ねてきました。

しかし、それらの大変な経験・苦労があったからこそ、今があると考えます。

したがって、はじめていちご栽培に取り組む方も失敗を恐れずに、とにかく
実践して、目の前のいちごに真摯に向き合ってほしいと思います。

計画の途中、栽培の途中は「本当にちゃんと美味しいいちごができるんだろうか」
「これでいいのだろうか」と不安で胸が張り裂けそうになったり、
心が折れてしまいそうになるかもしれません。

それでも、想像しましょう。
いちごが1粒できたときの感動を。
そしてそれを食べくれた時のお客様の感動を。

それまでの苦労を全て吹き飛ばしてくれるほど、そのいちごの価値は大きなものです。

その1粒を夢見て頑張りつづける、そんな人生も素敵だと私は思います。