カート
ユーザー
絞り込む
カテゴリー
グループ
コンテンツ
はじめまして。おさぜん農園の長村(おさむら)です。

今回は、いちごやいちご狩りに関する豆知識や、いちごの新規就農に興味をもっている人達向けに
色んな情報をお届けしたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。

さて、記念すべき第1回目のテーマは「いちごの旬」についてお話したいと思います。

そもそも、なぜこのテーマを選んだのか、

それは、当園のいちご狩りにお越し頂いたお客様から一番頂くご質問だからです。
やっぱり、みんな美味しいいちごが食べたいですよね!

そんないちごの旬ですが、先に結論から言っちゃいますと、いちごの旬は、、、冬です!

よく聞くのは、「いちごって春が旬なんですよね」「いちごは春の果物ですよね」
というご意見です。

こういったご意見が多いことには理由があると考えます。

以前は畑でのいちご栽培。いわゆる土耕が主流だったので、秋にいちごを植えると、
冬の間は休眠(植物の冬眠のような状態)し、気温が上がりだす春以降にいちごがすくすくと育ち、
4月〜5月にたくさんいちごが収穫できるのが一般的だったのではないかと思います。

しかし、現在はそういった土耕栽培ではなく、ハウスでのいちご栽培が多くなり、
「ボイラー」という暖房機器を使うことで、冬でも春の気温を保てるようになったので、
冬でもいちごが成るようになりました。
ボイラーなら、最低気温を設定しておけば、その温度以下にならないように自動でハウス内の温度を調節してくれるのです。
寒いクリスマスのシーズンにいちごが出回るのも、全てこういったハウス栽培によるものです。

このように、ビニールハウスやボイラーなどの暖房機器のおかげで、いちごの栽培期間が12月〜5月、
長ければ6月まで、約6か月間以上と飛躍的に長くなりました。

そして、その中でも12月〜2月に採れるいちごはとても美味しいのです!

なぜ12月〜2月に採れるいちごが美味しいのか。

その理由はいくつかありますが、最も大きな理由としては、光合成量の差です。

12月〜2月の寒い時期はいちごが真っ赤な完熟になるまで時間がかかり、
その間の光合成によってたくさんの糖分(甘味)がいちごに蓄積されていきます。

とても寒い冬の時期はまだ熟していない緑色のいちごから真っ赤な完熟のいちごになるまでは平均すると、
7日ほどかかるのです。

それに対し、暖かくなる春先以降は平均すると、3日ほどで真っ赤な完熟になるのです。

つまり、寒い冬の時期は7日間分の糖分が蓄積されていくのに対し、
春先以降は3日間分の糖分しか蓄積されていない、と言えるのです。

約2倍近く違いますね。


その他の理由としては、雨が降ったり天気が良くない日はいちごの葉が
光合成できないので、そういった日が続いてしまうと、糖分の蓄積が少なくなってしまい、
もちろん糖度は低下してしまいます。

潅水量(水を与える量)を調節することで、糖度が低くなることを抑制することは
できますが、やはり太陽の力あって、はじめて甘くて美味しいいちごができあがるのです。

ところで少し話が変わりますが、
現在、いちごのハウス栽培においてよく出てくる用語に【環境制御】という言葉があります。

簡単に言うと、ビニールハウス内の環境(温度、湿度、二酸化炭素濃度、飽差、日射量、培地内水分含有量など)を
24時間リアルタイムで測定。

そうしてハウス内の状況を見える化したうえで、いちごの栽培の為に最も適した数値に
近づけていく、そのような栽培手法を【環境制御】と言います。

例えば、晴れている日のビニールハウスでは、いちごは積極的に光合成をしていますが、
光合成している際に二酸化炭素を植物体に取り込んでいます。

そうすると、ビニールハウスの中の二酸化炭素濃度がどんどん低下していき、
二酸化炭素濃度が一定の数値を下回ると、太陽が照っていても、二酸化炭素がないため、
いちごが光合成できない状況になります。

そんな状態になるのを防ぐために、24時間ビニールハウス内の二酸化炭素濃度を測定し、
一定の数値を下回ると二酸化炭素をビニールハウス内に充填する機械が自動的に動き
出すようにしています。

こうした管理をすることで、いちごに光合成をする為に必要な二酸化炭素を与え、
太陽の力を存分に活用することができ、結果的に美味しいいちごができるようになります。

ちなみにこの二酸化炭素濃度を充填するための機器も色んな種類があり、充填のされ方も
色んな方法があるんですよ。

こうしてデータを蓄積し、それを活用することで、経験や勘だけに頼った栽培ではなく、
日々変わる状況に対応した最善の行動を取ることができるようになります。

そして結果として、就農1年目から平均的な農家以上の収量をあげたり、糖度の高い
甘くて美味しいいちごを作ることも可能になるのです。

また、こうした機器はデータをインターネットなどで他のいちご農家の方と
共有をすることも可能です。

そうすれば、同時期の状況を比較することができるようになり、最低温度の調節を
こうしよう、二酸化炭素濃度を高くする時間帯をここにしようなど、データに基づいた
確固たる栽培管理が行えるようになります。

現在では、日本全国でいちごの栽培が行われており、地域によって、気候など外部環境が
違ってくるかと思われます。

しかしそういった地域差があったとしても、様々な機器とデータを活用することで、
ビニールハウス内の環境は地域差を限りなく少なくすることが可能だと思います。

当園におきましても、ハウス内環境をこれまで蓄積した栽培データに基づき、
理想の環境に出来るだけ近づけていき、甘くて美味しいいちごがたくさんできるよう、
努力を続けています。

これからの農業界は大企業や海外資本の参入など、どんな大きな変化が起こるかは
誰にもわかりません。

当園を含め、今いる農家たちはさらにIT技術を駆使し、より効率よく栽培を
進めていかなければ、生き残っていけないと感じています。

時代の移り変わりとともに農業技術も日々進歩し、その技術を活用することで、
より美味しいいちごを、よりたくさん作ることができるようになりました。

そして、これからも益々そういった技術は向上していくことでしょう。

今回のコラムでは、いちごの旬は冬です、とお話しましたが、これからどう変わっていくか
わからない気候変動や日々進歩する技術、品種の改良などが行われ、いちごの旬も季節に
捉われないように変わっていく可能性が十分にあると思います。

また、現在の技術では、この京都の地ではいちごは12月から6月の間しか
収穫できません。

しかし今後、1年中いちごを収穫することが可能となり、1年中いちご狩りが楽しむことができる。
そんな未来がくるかもしれませんね。

私もそのような未来がくることを期待しています。